寿製薬株式会社

糖尿病とは?

1.糖尿病とは?

糖質(血糖)を調節するインスリンというホルモン(膵臓から分泌される)が不足したり、作用が不十分なために常に血糖が高い状態になっている病気です。自覚症状に乏しく、重篤な合併症を引き起こす特徴があります。厚生労働省が5年に1度実施する国民健康・栄養調査によると、平成19年度は「糖尿病が強く疑われる人」「糖尿病の可能性を否定できない人」を合わせた数が2200万人を超え、40歳以上の男性に絞ると3人に一人が糖尿病かその予備軍であるという結果となりました。

2.糖尿病の分類・原因

糖尿病にはその病態により2種類のタイプがあります。(下表参照)ひとつはインスリン依存型(Ⅰ型)糖尿病といわれるもので、原因はウイルス感染や自己免疫により膵臓が破壊されてしまうことです。若年でやせ型の人に発症する特徴ありますが、全糖尿病のうち5%と頻度はわずかです。インスリンがまったく出ないため、インスリンの注射が必要で、そのためにインスリン依存型と呼ばれています。もうひとつはインスリン非依存型(Ⅱ型)糖尿病といわれるもので、原因は体質の遺伝に食べ過ぎ、運動不足、ストレスが加わって発症します。その本態はインスリン受容体(インスリンが働く場所の機能)の低下といわれています。中年で肥満型の人に多く発症し、糖尿病のほとんど(95%)がこのタイプです。治療は食事療法・運動療法が主体で、それだけで治療が不十分な場合は内服薬 やインスリンの注射を追加します。

インスリン依存型(I型)インスリン非依存型(II型)
日本の頻度5%以下95%以下
体型やせ型肥満型とやせ型
発症年齢若年に多い中年に多い
原因膵β細胞のウイルス感染、自己免疫遺伝
血中インスリン低いやや低い~高い
治療方法インスリン注射が必要食事、運動療法が主体

3.どんな症状があるの?

初めはまったく自覚症状がありませんが、血糖が徐々に上昇してくると、全身倦怠感、頻尿・尿量増加、体重減少、口渇などの症状が出現し、合併症による症状も出てきます。

4.糖尿病の合併症

三大合併症
神経障害、網膜症、腎症です。神経障害を起こすと、手足がしびれたり感覚が鈍くなり、けがをしても気が付かず化膿させてしまうこともあります。下痢や便秘、排尿障害、吐き気や食欲低下が起こることもあります。網膜とは目の一番奥にある光の強さや色を感じる場所ですが、糖尿病ではこの網膜の毛細血管が破れて出血してしまいます。(網膜症)大出血を起こすと失明することもあります。腎症では腎臓の血管に障害が起こり、ろ過能力が低下して最終的には腎不全のために人工透析が必要になります。
動脈硬化症
糖尿病では網膜症・腎症のような毛細血管に障害を起こす他に動脈硬化症によって大きな血管にも障害を引き起こします。
急性合併症
急性の合併症には糖尿病性昏睡、感染症があります。糖尿病ではからだがブドウ糖を利用するのが困難なために、エネルギー源として脂肪を利用します。脂肪がエネルギーに変化するときにケトン体という物質を産生し、血液を酸性にしてしまいます。この状態をケトアシドーシスと呼び、ひどくなると昏睡状態(意識がなくなる)になり、死に至る場合もあります。糖尿病では神経障害のために下肢にけがややけどをおこしやすく、そこに感染をおこし血行障害も作用して壊疽になる危険性があります。水虫や深爪からも感染をおこすので、ふだんから下肢を清潔に保つ必要があります。膀胱炎などの尿路感染症もおこしやすいので注意が必要です。

 5.糖尿病の診断基準

もし尿糖が陽性の場合、糖負荷試験を行います。糖負荷試験とは空腹な状態でガムシロップのような糖液を飲んで、血糖の変動を観察します。

(判定)
正常
糖尿病
空腹時血糖
110mg/dl未満
126mg/dl以上
糖負荷試験2時間値
140mg/dl未満
200mg/dl以上

正常と糖尿病の中間を境界型糖尿病と呼びます。  糖尿病の診断には、 HbA1c測定も用いられます。HbA1cは2か月間の血糖値を反映して おり、正常は6.5%未満です。

6.糖尿病の治療方法

運動療法
別項参照。
食事療法
別項参照。
薬物療法
運動療法と食事療法を行っても治療が不十分な場合には、薬物療法 を行います。薬物には内服薬とインスリンの注射があり、内服薬には膵臓からのインスリン分泌を促す薬、インスリン受容体の働きを改善する薬、糖の吸収を遅らせる薬、糖を尿中に排泄する薬などがあります。
外科療法
膵臓の移植が試みられています。

7.糖尿病によい運動

運動負荷テストという運動時にどれぐらいの酸素を身体に取り入れることができるかというテストからATポイントという指標をだします。このATポイントの脈拍数が120拍とすると120拍以上の運動は無酸素運動という強度の強い糖質代謝の運動になります。120拍以下の運動は脂質代謝といい、脂肪を分解し酸素と結合してエネルギーにする比較的強度のゆるい運動です。これを有酸素運動と言います。 筋力トレーニングや短距離走などの短時間で行なう運動は無酸素トレーニングといい糖質代謝の運動となります。身体の中の糖質を早く枯渇させるため低血糖発作を起こしやすくさせる運動です。有酸素運動は脂質代謝系の運動のためある一定の時間運動をおこなうと身体の脂肪を分解し、エネルギーに変換して身体を動かすことができるため低血糖発作を起しにくい運動であり糖尿病の方には安全な運動であるといえます。また、末梢インスリン感受性も有酸素運動において改善します。しかし、運動をやめるとまた、インスリン感受性は1週間でもとにもどってしまうので運動の継続が大切です。
運動の種目紹介と強さの目安
・運動の種類 運動の頻度:週 3回(1回あたり60分で200~300kcalのエネルギー消費を目標に)
・運動の強さ 最大運動強度の 50%・年齢予測50%脈拍数のいずれかで行なう。
運動中の自覚的な運動の強さと目安
30-60分間の間、運動しながら会話ができるような強さ 。 ニコニコペースで「楽からややきつい」と感じる程度。

<運動を行う上での注意点 >
a)空腹時には行わない。低血糖を起こす危険があります。
b)運動の強さに注意。運動が強すぎると無酸素運動になってしまい、低血糖を起こす危険があります。
c)血糖値が高すぎるときに運動すると、もっと高くなってしまう場合があります。空腹時血糖が250mg/dl以上のときには運動は禁止です。

8.食事療法

糖尿病と診断されてしまったら、日常の生活強度に合った食事をする必要があります。(食事療法)糖尿病食で食べてはいけないものはありませんが、自分にあった分量の食事で、必要とする全ての栄養素をとるように工夫します。バランスのとれた食事になるので、家族と一緒に食べられます。医師の指導に従ってください。

■1日の摂取カロリー量を計算|糖尿病の食事

糖尿病の食事療法の基本は一日の食事で必要なエネルギー量を知ることです。

標準体重=身長(m)×身長(m)×22(BMI)

1日の摂取カロリー=標準体重×生活強度
*生活強度
サラリーマン・主婦など軽労働の人:30
動きの少ない高齢者の人:25
工事現場作業員など重労働者:40

ここで計算した1日の摂取カロリーを3食でできるだけ均等にとり、かつ栄養のバランスをよくすることが理想です。

■カロリー計算|糖尿病の食事

糖尿病の方の食事の1日の平均カロリーは1600キロカロリーだといわれています。
食材ごとにカロリー量が記載された「食品交換表」を参考にしてカロリーを計算しましょう。
1単位を80キロカロリーとし、それを20単位食べるというように計算すると良いようです。

  1. ごはん・芋・小麦粉 11単位
  2. 果物 1単位
  3. 魚介・肉・卵・大豆 4単位
  4. 牛乳・乳製品 1.4単位
  5. 油脂 1単位
  6. 野菜 1単位
  7. 味噌 0.3単位
  8. 砂糖 0.3単位

■カロリー制限より炭水化物制限|糖尿病の食事

日本の糖尿病の食事療法は、カロリー制限を中心に行なわれています。
しかし、現在の研究によれば、炭水化物が血糖値を上げることがわかっており、欧米では、炭水化 物をコントロールする食事が糖尿病の食事療法となっているそうです。
ただ、日本糖尿病学会の提言によれば、炭水化物のみを極端に制限した糖質制限食は現時点では十 分なエビデンスがそろっていないため薦められず、総エネルギー摂取量の制限を糖尿病治療の食事療法として薦めるということになったようです。