利尿薬 病気のガイド

病気のガイド

利尿薬とは?

尿量を増やし、体内の余分な水分を減らします。浮腫性疾患に適応となる利尿薬にはその作用機序により、ループ利尿薬、サイアザイド系(および類似)利尿薬、K保持性利尿薬、バソプレシンV2受容体アンタゴニスト、浸透圧利尿薬があります。その他にも利尿薬としては緑内障治療に使われる炭酸脱水素酵素阻害薬もありますが浮腫性疾患での適応はありません。

 

1.各利尿剤の特徴

1) ループ利尿薬

ループ利尿薬というのはヘンレループの太い上行脚にあるNa-K-2Cl輸送系(NKCC2)を阻害する利尿薬の総称で、もっとも多く使用されて来たのはフロセミド(経口薬、静注薬)ですが、他にブメタニド(経口薬、静注薬)とトラセミド(本邦では経口薬のみ)があります。また長時間作用型としてアゾセミドが本邦では使用されています。

 

2) トルバプタン

トルバプタン(サムスカ®)はバソプレッシンV2受容体選択的アンタゴニストで2010年以降日本でも「その他の利尿薬が効果的でない体液貯留を伴う心不全と肝硬変」に経口薬として使用されるようになりました(3.75 mg~15 mg/日)。またトルバプタンに先立ち「腫瘍性のSIADH」に限って2006年からはもう一つのV2R阻害薬であるモザバプタン(フィズリン®)がすでに使用されています。いずれも集合管のV2受容体の選択的拮抗薬であり水チャネルAQ2の誘導を阻害して水再吸収を選択的に抑制します。他の利尿薬と異なり、水を選択的に排泄促進し、電解質の尿中喪失が少ない点が特徴です。

 

3) サイアザイド系およびサイアザイド系類似利尿薬

ループ利尿薬よりも遠位部の遠位尿細管におけるNaCl-共輸送(NCC)を阻害して利尿効果を発します。本邦ではサイアザイド系としてはトリクロルメチアジドやヒドロクロチアジドなど、サイアザイド系類似としてはインダパミド、トリパミド、メフルシド、などが本邦では使用されています。いずれも経口摂取による吸収はよく蛋白と結合して運搬され、近位尿細管から排泄されます。そのT1/2はGFRの低下および高齢で延長し利尿効果は減弱します。食塩感受性高血圧症に良い適応になっていますが、浮腫性疾患に対しては単独で使用されることは少ないです。

 

4) カリウム保持性利尿薬

K保持性利尿薬としてはミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストとNaチャネル遮断薬がありいずれも遠位部ネフロンに作用する利尿薬です。いずれもループ利尿薬やサイアザイドの様にK+排泄及び酸排泄を促進しません。またCa2+, M2+排泄も増加させません。こうしたことからサイアザイドとの併用で有用性を発揮しています。中でもスピロノラクトンは肝硬変による腹水治療には第1選択薬であり、かつ左室収縮能不全によるうっ血性心不全にも神経内分泌学的に改善効果を示しています。ただし腎機能の低下により高K血症を起こしやすくなるので定期的な採血のよる注意が必要です。

 

5) 浸透圧利尿薬

マニトールやグリセロールは血中で水解を受けずに未変化体で糸球体からほぼ完全に濾過されかつ尿細管での再吸収を受けないために浸透圧利尿を起こします。マニトールはヘンレ上行脚に到るまでの水に透過性のあるネフロンを通過することで濃縮されNa+再吸収を促して管腔内Na+濃度は減少しその遠位部ネフロンでNa+のバックフローを生じNa+利尿を生じるとともにK+分泌も促します。マニトールは細胞からの水を除去し、血流量を増やし腎髄質血流の増加は尿を希釈し、腎血流の増加と膠質浸透圧減少はGFRを増加させます。

 

6) カルペリチド(ハンプ®)

心房から分泌されるNa利尿ペプチドで本邦で発見され、本邦でのみ急性心不全を適応として1995年に薬価収載されています。このためエビンデンスは限られています。投与法としては0.1μg/kg/分で持続静注し、0.2μg/kg/分まで増量できます。急性心不全109例に対しトルバプタンとのRCTの結果ではアウトカムに有意差はなかったとしています。ただしカルペリチドはトルバプタンと異なり血管拡張作用もあり、その副作用として低血圧に十分注意する必要があり、また低血圧症例には投与できません。

 

2.各病態での投与方法

1) うっ血性心不全

血管拡張薬とともにループ利尿薬を投与すると通常心拍出量の低下をきたさずにcentral filling pressureを減少させ、肺うっ血を改善するのに有効です。ただし注意すべきはうっ血性心不全では利尿効果を発する閾値が増加し、かつ最大効果も低下します。このため、往々にして経口ではなく静注が必要となり、かつ投与量も多くする必要があります。また浮腫が高度な場合は塩分と低Na血症(<130 mEq/L)の場合は水分摂取の制限が必要になります。通常フロセミドでは静注で20mg/回から初めて80mg/回まで必要に応じて増量します。それ以上の高用量を必要とする場合は持続点滴が望ましいです。ブメタニドは静注で1 mgを投与します。これらによって効果が十分でない場合、カルペリチド(0.1~0.2 μg/kg/分)またはトルバプタン(3.75 mg~15 mg/日)を併用します。低Na血症がある場合はトルバプタンの良い適応だが高Na血症に注意し、カルペリチドは低血圧に注意する必要があります。

 

2) ネフローゼ症候群

低アルブミン血症のある場合はループ利尿薬の投与量を増加させる必要があります。静注で行いフロセミドの総量で120mg/日(経口で240mg/日)までは増量できます。またブメタニド 1 mg、トルセミド8 mg/日も投与できます。血清Alb濃度が2.0g/dL以下の場合は、しばしばアルブミンとフロセミドの同時投与が効果的です。この場合も塩分制限と水分制限は必須となります。ネフローゼ症候群などの浮腫性疾患では往々にして循環体液量の低下を疑いますが、実際には低下していないことが報告されており、AKIを合併しない限りは利尿薬で効果的に治療は可能です。

 

3) 肝硬変による浮腫・腹水

AASLDガイドラインでは軽症例にはスピロノラクトン25-50mg/日から開始し、より重症な例ではフロセミド40mg+スピロノラクトン100mgから最高フロセミド160mgとスピロノラクトン400mgの併用を行います(いずれも経口薬として)。またトルバプタンが低ナトリウム血症のある場合有効で3.75mg/日からの投与を検討します。どの利尿薬を使うかは血清KおよびNa濃度によって判断します。

 

4) CKD

糖尿病性腎症などの場合はネフローゼ症候群に治療は準じます。ループ利尿薬が第1選択で、難治性の場合にはサイアザイドの併用が効果的な場合があります。浮腫がなく水Naバランスが保たれていてもアシドーシスと高K血症の是正にステージG4以降にループ利尿薬を投与することも多くあります。フロセミドは「急性または慢性腎不全」に対しては単回で500mgまで、1日1000mgまでとされていますがこの高用量が必要となる場合は持続静注で緩徐に行います。ループ利尿薬およびサイアザイドのCKDにおける投与ではより尿酸値を上昇させることが多く、それ自体が腎機能を低下させる危険を伴うので注意します。サイアザイドは理論的にはGFRを低下させるので通常stage G3以降では投与しない。ただし難治性の浮腫でループ利尿薬の効果が減じている場合、サイアザイドの併用が有効な場合があります。

 

5) AKI

AKIは以前、腎前性、腎性、腎後性と分類されていましたが、2012年KDIGOによる急性腎障害ガイドラインではこのような分類を推奨していないように、単純に鑑別できる場合はむしろ少ないです。したがって利尿薬を使用する場合、何が原因のAKIかを鑑別した上で利尿薬の適応を検討する。水腎症では勿論禁忌ですが、急性尿細管壊死を伴う場合効果はあまり期待できません。AKIにおいて利尿薬を用いることが予後の改善にはつながらない、というRCTの結果はありますが、溢水の改善に可能性があれば躊躇すべきではないでしょう (Nigwekar, SU, et al. Seminars in Nephrology 31, 2011, 523) 。まずは十分量のフロセミドの効果を判定することが必要で、大量になる場合は内耳障害に十分注意する必要があります。心不全に伴うAKIであればカルペリチドやトルバプタンの投与も検討します。

 

guide07-1

ネフロンセグメントの主な機能

 

guide07-2

 

主な利尿薬の作用部位

 

腎臓ネット腎臓病診療の最先端Vol.32 第2章より引用
https://www.jinzou.net/01/pro/sentan/vol_32/ch02.html