寿製薬株式会社

食道がん

1.食道がんとは

食道がんは、のどと胃をつなぐ食道にできるがんです。食道がんの特徴は、男性が女性の5倍くらい多く発生すること、60代、70代の比較的高齢者に多いこと、食道の中央部(胸部食道)に発生しやすいこと、早期には症状が出にくく、進行するとがんの近傍だけでなく頸部から胸の中、腹部に至る広い範囲へのリンパ節転移が多いこと、などが挙げられます。他のがんと同様に加齢とともにかかりやすくなる病気ですが、お酒をたくさん飲む人、タバコを多く吸う人により多いようです。

2.症状

多くの患者さんは、突然、食物がつかえ、びっくりして来院されます。がんで食道が少しずつ狭くなっていくのですが、毎日食事をするので慣れてしまい、その変化に気づきにくいのです。「そういえば食事のときに汁物をよくとるようになった」とか「水を飲みながら食事をするようになっていた」ということがあるようです。
また、がんが気管の周囲のリンパ節に転移して反回神経という声帯を動かす神経を圧迫すると、声が嗄れ、しゃがれ声になります。
食物の通りの悪い状態が長く続くと、体重が減ってきます。あまり食事をせずにお酒ばかり飲んでいる人は、つかえ感を自覚することが遅れて、ひどくやせてきて、やっと気づくこともあります。時には血を吐いたり誤嚥して肺炎を起こす人もいます。

3.診断

がんを早期に発見するため、毎年1回の内視鏡検査をおすすめします。検査時にヨード(のどの消毒に使われるルゴール液)を散布して食道粘膜を染めると、がんの部分だけ染まらないため、通常では見えない小さながんでも発見できます。この部分を採取し、さらに組織検査を行います。胃の内視鏡検査時にも、ぜひ一緒に診てもらってください。バリウムによるX線造影検査のときも、胃だけでなく食道も診てもらってください。粘膜下層までにとどまる表在がんは発見できます。これも毎年1回、定期的に検査することが大切です。

4.治療

病期(がんの進み具合)により、種々の治療法があります。粘膜内にとどまる早期がんには、内視鏡治療が行われます。粘膜下層から筋層、外膜に浸潤(浸透)したがんでは、外科的手術が行われます。他の臓器に転移したがんには、抗がん剤を投与する化学療法や、放射線を照射し、がん細胞の増殖を止める放射線療法が行われます。

1)内視鏡治療

内視鏡を挿入して、食道粘膜のがんの部分を切除する方法です。一般的な方法は内視鏡的粘膜切除術(EMR)で、がんがより広範囲の場合は内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が行われます。一週間前後の入院が必要で、粘膜がんのみに行われますが、90%以上の人が完治します。

2)外科的治療

食道がんの手術は、頸・胸・腹部に及ぶため,外科手術の中でも最も大きな手術の一つです。手術のために死亡される可能性は1~2%程度です。経験の多い施設では60%以上の方が治るようになりました。順調に経過すれば、術後3~4週間くらいで退院できます。

3)化学・放射線治療

手術で取り切れないがんには、抗がん剤と放射線による化学・放射線治療を行います。その後、がんが縮小した時点で外科手術の対象になる人もいます。