脂質異常症 病気のガイド

病気のガイド

脂質異常症とは?

脂質異常症って、どんな病気?

脂質異常症とは、血液中にふくまれるコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)などの脂質が、一定の基準よりも多い状態のことをいいます。以前は、高脂血症ともいわれていました。
血液中に余分な脂質が多くなると、動脈硬化を起こしやすくなり、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高くなります。それが脂質異常症という病気です。
一般的には「血液がドロドロの状態」、それが脂質異常症といってもいいでしょう。
脂質異常症には、自覚症状はほとんどありません。そのため気づくのが遅れ、ある日とつぜん心筋梗塞などの発作におそわれる人が少なくありません。
発作を防ぐには、毎日の生活(食事や運動)に気をつけることと、健康診断などで「脂質異常症の疑いがある」といわれたときは、放置せずに早めに受診して医師の指導を受けることが大切です。

悪玉・善玉コレステロールとは

コレステロールには、悪玉(LDL:低密度リポ蛋白)コレステロールと善玉(HDL:高密度リポ蛋白)コレステロールがあることは、よく知られています。この2つは、どこが違うのでしょうか。
じつは悪玉と善玉は、まったく同じコレステロールです。ただし、コレステロールは血液に溶け込めないため、リポたんぱくというカプセルに包まれて血液中を移動します。そのカプセルのうち、からだの隅々までコレステロールを運ぶ働きをしているものを「悪玉」、反対にからだから余分なコレステロールを回収する働きをしているものを「善玉」と呼んでいるのです。
悪玉が多いということはコレステロールがたまりやすく、また善玉が少なくても回収されるコレステロールが少ないので、コレステロールがたまりやすくなります。
最近の研究から、悪玉のなかでもとくに低密度のタイプが多いと動脈硬化になりやすく、また心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなることがわかっています。

脂質異常症の新しい診断基準

日本動脈硬化学会による脂質異常症の診断基準が2012年版に改定され、次のようになりました。

脂質異常症:スクリーニングのための診断基準(空腹時採血)

LDLコレステロール

140mg/dL以上

高LDLコレステロール血症

120~139mg/dL

境界域高LDLコレステロール血症

HDLコレステロール

40mg/dL未満

低HDLコレステロール血症
トリグリセライド

150mg/dL以上

高トリグリセライド血症

・LDLコレステロールはFriedewald (TC-HDL-C-TG/5)の式で計算する(TGが400 mg/dL未満の場合)。
・TGが400 mg/dL以上や食後採血の場合にはnonHDL-C (TC-HDL‐C)を使用し、その基準はLDL-C+30mg/dLとする。
(一般社団法人日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」より引用)

従来の診断基準の指標は「悪玉(LDL)コレステロールが多い場合」、「善玉(HDL)コレステロールが少ない場合」、「中性脂肪が多い場合」という3つのタイプで表していましたが、「境界域高LDLコレステロール血症」を加え、他の高リスク病態がある場合には治療必要性の検討を要する、としました。

危険因子が多いと高リスクに

診断基準にある数値が基本となりますが、悪玉(LDL)コレステロール値については、ほかに危険因子がある場合には、さらに厳しい数値(管理目標値)が設定され、治療方針が決定されます。
危険因子というのは、年齢や喫煙習慣の有無、高血圧や糖尿病があるかどうか、家族の病歴はどうか…といった要因です。
たとえば肥満などが原因で高血圧や糖尿病などを併発している場合(メタボリックシンドローム)や、家族に心筋梗塞や狭心症などの病歴がある場合などには、リスクが高いと判断されます。この場合には悪玉(LDL)コレステロール値を、リスクに応じて120 mg/dL未満、100mg/dL未満におさえるなど、治療目標が厳しくなります。
反対に、危険因子がない場合には、悪玉(LDL)コレステロール値が少し高めでもリスクが低いと判断され、食事などの生活指導を中心とした治療がおこなわれます。
実際の治療方針は患者さんごとのリスクを細かく考慮しながら医師が判断しますので、よく話を聞くようにしましょう。

「LH比」も目安に

最近、診断の目安として「LH比」も重視されています。LH比とは、「LDLコレステロール値/HDLコレステロール値」のこと。たとえばLDLコレステロール値135mg/dl、HDLコレステロール値45mg/dlの場合、「135/45=3」でLH比は3.0となります。
LDLコレステロール値が正常であっても、HDLコレステロール値が低いと心筋梗塞を起こす例が多いため、予防には両方のバランスを示す数値(LH比)が参考となります。LH比が2.5以上だと動脈硬化や血栓のリスクが高いため、「ほかの病気がない場合は2.0以下に」、「高血圧や糖尿病がある場合、あるいは心筋梗塞などの病歴がある場合には1.5以下に」を目安とする病院が増えています。

新しい診断基準からもわかるように、脂質異常症には3つのタイプがあります。それぞれについて、もう少しくわしく説明してみましょう。

脂質異常症のタイプ

高LDLコレステロール血症

悪玉とされるLDLコレステロールが多すぎる状態で、脂質異常症ではこのタイプがもっとも多くみられます。それだけに、LDLコレステロール値は脂質異常症かどうかを知るための重要な指標なので、健康診断などで総コレステロール値が高い場合には、LDLコレステロール値についても検査を受けましょう。
次のような式から、自分で計算することもできます(脂質異常の新しい診断基準にも記載)。
LDLコレステロール値=総コレステロール値-HDLコレステロール値-(中性脂肪値/5)
※中性脂肪値が400mg/dl以上の場合は、この式は使うことができません。

低HDLコレステロール血症

善玉といわれるHDLコレステロールが少なすぎる状態です。HDLコレステロールが少ないと、血液中から余分なコレステロールがうまく回収されないため、コレステロールがたまりやすく、動脈硬化のリスクが高くなります。
脂質異常症というと、悪玉(LDL)コレステロールだけが注目されがちですが、善玉(HDL)コレステロールの数値もきちんとチェックしましょう。

高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)

中性脂肪が多すぎる状態のことです。中高年男性には、このタイプも多くみられます。
最近の研究などから、中性脂肪が多いと悪玉(LDL)コレステロールも増えやすいことが判明しています。
(注)実際の脂質異常症では、コレステロールと中性脂肪の両方が多い混合型の人も少なくありません。

脂質異常症の原因は?

影響が大きい食生活

脂質異常症の原因の多くは、食生活にあります。とくに高LDLコレステロール血症や高トリグリセライド血症の場合には、食生活が直接的な原因となりやすいので注意が必要です。
1. 高LDLコレステロール血症
動物性脂肪の多い食品(肉類、乳製品など)、コレステロールを多くふくむ食品(鶏卵、魚卵、レバーなど)が好きで、よく食べていませんか。また、食べすぎによる慢性的なカロリー過多も原因のひとつです。
2. 高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)
食べすぎ、飲みすぎ、あるいは高カロリー食品(甘いものや脂肪分の多い肉類など)のとりすぎによる、慢性的なカロリー過多が第一の原因です。とくにアルコールの飲みすぎは中性脂肪を増やしやすいので注意しましょう。
3. 低HDLコレステロール血症
善玉(HDL)コレステロールが減ってしまう原因として、運動不足、肥満、喫煙などが指摘されています。バランスのよい食事を心がけるほか、こうした要因にも注意が必要です。

遺伝と脂質異常症

脂質異常症の原因の中に、少数ですが「家族性高コレステロール血症」といって、遺伝的要因によるものがあります。この場合には動脈硬化への進行が早いので、食事などによる自己管理だけでなく、病院を受診し、医師による治療や指導が必要となります。
家族など近親者に脂質異常症の人が多い場合には、早めに受診することが大切です。

超悪玉コレステロールに注意!
コレステロールの功罪

コレステロールは悪者…そう決めつけていませんか。
コレステロールは、私たちの体内で細胞やホルモンの材料となる重要なものなのです。しかし、その量が増えすぎると、血液がドロドロ状態となり、血管壁をもろくし、やがて動脈硬化を引き起こします。
とくに問題となるのは、悪玉(LDL)コレステロールです。LDLはコレステロールを全身に運ぶリポたんぱくのひとつで、これが増えると血液中のコレステロールの全体量も増加し、動脈硬化のリスクが高くなります。

超悪玉コレステロールとは

LDLコレステロールには、さまざまな密度のものがあります。心筋梗塞などの心疾患を起こした人のLDLコレステロールを調べると、とくに密度の低いタイプが多くみられます。
超低密度コレステロール(VLDL)は、密度が低いだけに血管壁に侵入しやすく、また肝臓に吸収されにくいため血液中に長くとどまって酸化され、動脈硬化の直接的な原因となりやすい性質があります。そのため「超悪玉コレステロール」と呼ばれています。
悪玉(LDL)コレステロールが多い人の中でも、超悪玉(VLDL)コレステロールの量が多い人ほど、心筋梗塞を起こす確率が高くなります。

とくに注意したい人

LDLがなぜ低密度化するのか、その理由はまだ解明されていませんが、一般に次のような人は超悪玉(VLDL)コレステロールを多くもっているので注意しましょう。

  1. 狭心症や心筋梗塞を起こしたことがある人
  2. 中性脂肪値が高い人
  3. 血糖値が高い人
  4. 血圧が高い人
  5. 肥満(とくに内臓脂肪型肥満)の人

また、善玉(HDL)コレステロールが少ない人も、超悪玉(VLDL)コレステロールが多い傾向がみられます。

中性脂肪は肥満をまねく
中性脂肪が増えすぎると

中性脂肪は、糖質とならんで私たちにとって重要なエネルギー源となるものです。
しかし、エネルギーとして使われなかった中性脂肪は、皮下や内臓周辺に貯蔵されます。そのため必要以上に中性脂肪が増えると、肥満をまねきます。とくに内臓周辺に脂肪が増えると、生活習慣病の大きな原因である内臓脂肪型肥満を引き起こします。
中性脂肪は、アルコールや甘いもの(糖分)によって増えやすい傾向があります。そのためお酒をよく飲む人や、間食でケーキなどをよく食べる人は、中性脂肪が増えやすいので注意が必要です。

中性脂肪と超悪玉コレステロール

最近、中性脂肪と超悪玉(VLDL)コレステロールの密接な関係が注目されています。それは中性脂肪の増加によって、VLDLコレステロールも増えるためです。
その理由は、中性脂肪が増えると脂質代謝に異常が生じやすくなり、それがLDLの小型化をまねくのです。
反対に中性脂肪が減少すると、VLDLコレステロールが普通のLDLコレステロールに戻ることもわかっています。このことから、動脈硬化の予防には中性脂肪を増やさない、あるいは減らすことが重視されています。

脂質異常症を予防するには?

脂質異常症の予防の目標は、ドロドロの血液をサラサラにすること。その基本は、食生活に気をつけることです。ここで基本を理解したうえで、コレステロールを減らそう、中性脂肪を減らそうをお読みください。

主食をきちんと食べ、動物性脂肪をひかえめにする

現代人の食事は、普通に食べているつもりでも、カロリー過多になりがちです。その理由は、おかずに肉類や揚げ物類など高カロリーのメニューが増えたことです。また、間食でケーキなどの甘いものを食べる機会が増え、慢性的にカロリー過多になっているといえます。
主食の穀物類(ご飯、パンなど)には脂質が少ないので、まず主食をきちんと食べること。そして動物性脂肪(とくに肉類)を少しひかえめにしましょう。牛肉や豚肉を食べるときにはロースよりもヒレを、また鶏肉の場合には皮を食べないようにするだけでも、脂質をかなり減らすことができます。

新鮮な青魚を多く食べる

動物性脂肪でも、魚に多くふくまれている不飽和脂肪酸には、悪玉(LDL)コレステロールを減らす働きがあります。その代表がEPA(イコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)です。
青魚(サバ、イワシ、サンマなど)にはとくに多くふくまれていますが、マグロの赤身やタイなどにも多いので、おかずに魚を積極的にとり入れるようにしましょう。焼き魚よりも、刺身や煮魚のほうが、EPAやDHAを効率よくとることができます。

植物性タンパク質と食物繊維をたっぷりと

植物性タンパク質には、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす働きがあります。その代表は大豆類です。煮豆などのほかに、豆腐、納豆などの大豆食品を毎日の食事にとり入れましょう。
また食物繊維には、コレステロールや中性脂肪が腸内で吸収されるのをさまたげる働きがあります。とくに水溶性の食物繊維には、コレステロールを減らす作用もあります。現代の日本人は、食物繊維を必要量の半分程度しかとっていないので、積極的にとるようにしましょう。食物繊維が多いのはイモ類、根菜類、キノコ類で、水溶性のものに野菜類、豆類、海藻類などがあります。

コレステロールを減らそう

コレステロール値が高めの人は、脂質異常症を予防するには、に加えて次のことを心がけましょう。

コレステロールが
多い食品は
ひかえめに
コレステロールが多い食品(鶏卵、イクラやタラコなどの魚卵、ウナギなど)を食べすぎないようにしましょう。人によって、コレステロールが多い食品を食べるとすぐに血中コレステロール値が上がる人と、あまり反応しない人とがいます。反応しやすい人は、とくに注意が必要です。
ただし、これらの食品にもさまざまな栄養素がふくまれています。まったく食べないのではなく、あくまでも食べすぎないことが大切です。
ビタミン類を
たくさんとる
ビタミンCやEには、悪玉(LDL)コレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化を予防する働きがあります。ニンジン、カボチャ、トマト、ピーマンなどの緑黄色野菜や、魚ではサケやサバにもビタミン類が豊富です。ビタミンCとEは一緒にとると、より効果的です。
タバコを
やめましょう
タバコは善玉(HDL)コレステロールを減らすうえ、悪玉(LDL)コレステロールの酸化を促進します。動脈硬化の直接的な原因となりやすいので、ぜひ禁煙を心がけましょう。
ストレスを
解消する
ストレスを受けたときに分泌されるストレスホルモンには、コレステロールを増やす作用があります。仕事が忙しいときや、人間関係で問題をかかえているときなどには、意識的にストレスがたまらないようにし、積極的に気分転換を図りましょう。また、夜更かしはやめて、睡眠をしっかりとることも大切です。
適度の運動を
する
適度の運動をすると、善玉(HDL)コレステロールを増やすことができます。1日の歩数が2000歩未満の人にくらべると、1万歩以上歩く人は10%以上もHDLコレステロールが多くなっています(厚生労働省「平成12年国民栄養調査」)。
低HDLコレステロール血症の人はもちろんですが、すべての脂質異常症の予防や改善に、運動は非常に大きな意味をもっています。
中性脂肪を減らそう

中性脂肪値が高めの人は、脂質異常症を予防するには、に加えて次のことを心がけましょう。

腹八分目に
する
慢性的な食べすぎによってエネルギーが余ると、中性脂肪となってどんどん蓄積されていきます。肥満を防ぐためにも、腹八分目にしましょう。
1. ゆっくり食べるクセをつける
2. ひと口ごとによく噛んで食べる
3. 食事の途中で箸を置き休む
アルコールを
飲みすぎない
適量のアルコールには、善玉(HDL)コレステロールを増やす効果があります。ところが飲みすぎると、今度は中性脂肪を増やす原因となります。適量とは、1日当たりビールなら大瓶1本、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯程度までのことです。
アルコールそのものにカロリーがあるうえ、つまみなどで揚げ物などを食べると、カロリー・オーバーの原因にもなります。
適度の運動を
する
中性脂肪の中でも、さまざまな生活習慣病の原因となる内臓脂肪は、運動によって減らすことができます。ウォーキング、アクアサイズ(水中運動)、軽めのジョギング、エアロバイク(固定式の自転車こぎ)などの有酸素運動で、中性脂肪を効率よく減らしましょう。
1日10?15分程度の運動でもいいので、1日2?3回、週に4日程度は続けることが大切です。
夜間は
あまり食べない
夜間はからだをあまり動かさないため、エネルギー消費量が少なくなり、食べたものが中性脂肪になりやすい傾向があります。夜間に仕事をする人以外は、夕食のカロリーはひかえめにし、寝る前の夜食は食べないようにしましょう。